高性能インプラント治療・技術を推進する「光機能化インプラントグローバルネット」

光機能化への取り組み

光機能化技術の概要

 チタンエイジング現象の回復方法として発見および技術開発されたのが、「光機能化技術」です。光機能化技術とは、紫外線領域内の特定波長をもつ複数の光線で、決められた強度で、ある一定時間、インプラント表面を処理する技術です。しかし、最適化された波長・強度をもつ複数の光を組み合わせ、しかも、照射時間を順守しなければ効果は得られません。例えば、通常販売されているブラックライトを15分間照射しても、何の生物学的効果も得られません。光機能化により、インプラント表面は、チタンエイジングから回復するだけでなく、+αの効果が付与されます。

 まず物理学的変化として、インプラント表面が撥水性から超親水性へと変化するとともに、血液に対する親和性も著しく向上します(図1)。ただしこの親水性だけが能力の高いインプラントを特徴づけているわけではなく、この他にも、様々な物理化学特性が向上することによって、骨結合能力の増加につながるのです。

 例えば、図2は、一定時間内にインプラント表面に接着した骨芽細胞(骨を作る細胞)です。左は通常のチタン粗面上、右は光機能化後のチタン粗面上の骨芽細胞の接着状態です。通常のチタン表面上では、細胞は十分に伸展できず小さく丸く付着しており、その数も少ないことがわかります。一方、光機能化チタン表面上では、細胞は大きく進展し、かつ、様々な方向に突起を伸ばしており、その数も多いことがわかります。

 

 その結果、光機能化チタン表面上では、インプラント周囲に形成される骨の量が増大し、また骨形成のスピードも速まるのです。光機能化によって、インプラントの初期の骨結合強度が3倍以上増加することが動物実験で明らかになっていますが、これらの実験結果が、そのことを強く裏付けています。

 さらには、図3で示すように、光機能化チタン表面での骨インプラント接触率は、98.2%に達し、事実上、ほぼ100%の完全な状態と考えられます。この完全に近似した骨形成の現象が、スーパーオッセオインテグレーションと新しく呼ばれる現象であり、数々の有名科学誌、ならびにチタン教科書に定義されました。光処理を行わないインプラントの骨接触率が55%であることからも、光機能化の意義が充分理解できると思います。

 

 そして、インプラント成功に必要なインプラント周りの骨の違いを見てみると、数ヶ月経過したインプラントにこの紫外線を照射し、直後に体に植え込むと、インプラント周囲には98%を越える(ほぼ100%)の骨が出来ていることが確認されました。

光機能化技術による臨床的インパクト

 光機能化技術により、現在のインプラント臨床に様々な貢献をもたらすことが期待されています。まず最大の臨床的恩恵として、すべての患者さんに、すべての症例において、そしてすべての部位において、能力の落ちていない(エイジングをしていない)インプラントを、いつでも、平等に提供できることにあります。チタンエイジングの項で述べていますが、インプラントがどの程度エイジングしているかをしる手段はありません。その状態でインプラントを埋入することを避けることができるのです。光機能化は、その懸念を一転して、いつも最高の状態のインプラントを使用することを可能にするのです。つまり、インプラント治療が高いレベルで標準化されるのです。また、光機能化によって、以下に示す様々な効果や、予期せぬインプラントフェイラーの予防につながる可能性を示唆されます。光機能化の効果に関してまず、インプラント自体の骨結合速度が向上すれば、インプラント治癒期間の短縮につながります。また、インプラントの骨伝導能が高まりますので、骨移植併用インプラント埋入のような複合かつ困難な症例での成功率向上に大きく貢献する可能性があります。また、インプラント治療の技術的ハードルが下がり、より多くの患者さんがインプラント治療の恩恵を受けることに繋がります。また、光機能化によりインプラントのほぼ全面に骨接触がもたらされれば、より短いインプラントの応用が可能となり、骨移植やサイナスリフトなどのインプラント前外科処置の必要性が減ることが予想されます。その結果、治療期間が短縮し、費用も節減できる可能性が生まれます。また、インプラント周囲の荷重分配が改善され、長期安定性が向上する可能性も考えられます。このように、光機能化によりインプラント臨床は飛躍的に向上し、治療パラダイム(概念・方針)が大きく革新するという、かつてない期待がよせられています。そして、これまで出された多くのデータがこれらのことを支持しています。


 光機能化によるインプラント骨結合能向上とそのメカニズム、および、現在までに出ている臨床データと今後の可能性に関する詳細は、研究会主催のセミナーで随時アップデートしながら公開しています。

光機能化技術の特徴:インプラントの高性能標準化能力

光機能化技術は、これまでのインプラント表面改質法と比較して、効果、応用性、そして学術・科学的背景に関して、大きく異なる特徴を有しています。

  1. 骨結合(オッセオインテグレーション)能力の比類ない向上
     効果初期の骨結合強度が3倍となることや骨芽細胞の接着量が3-5倍になるといったことに代表される光機能化の生物学的効果は、過去の報告や、これまで導入された表面改質技術にまったく例を見ず、圧倒的なものであります。
  2. 応用の普遍性
     インプラントメーカーが行ってきた表面改質技術とは異なり、この光機能化技術は、これまでテストした全てのチタン製インプラント表面に効果があることが示されています。また応用の妥当性は、科学原理的にも明らかであります。このことにより、現存するほぼすべてのインプラントへの応用を可能にし、ドクターは現在の使用システムを変更することなく、光機能化を導入することができ、また使用しているブランドから異なるサーフェスが発売されたとしても、それがチタンである限り、光機能化の恩恵を受け続けることができます。そして、何より、この普遍性の特徴により、光機能化技術は、世界のほぼすべての患者へと貢献できる道を開いたのです。
  3. 高いレベルでの科学性
     光機能化技術に関する最初の科学論文は生体材料科学で最も権威ある科学雑誌である「Biomaterials」へ2009年に発表されました。この雑誌のインパクトファクターは7.3であり(通常のインプラント雑誌や歯科の雑誌のインパクトファクターは1-2)、論文の価値とその貢献度の大きさを知ることができます。

The effect of ultraviolet functionalization of titanium on integration with bone.

Aita H, Hori N, Takeuchi M, Suzuki T, Yamada M, Anpo M, Ogawa T.

Biomaterials. 2009 Feb;30(6):1015-25. Website

 この論文以降、光機能化ならびにチタンエイジングに関する科学論文は、Biomaterialsをはじめ様々な生体材料科学、歯科医学領域の英文雑誌に20本以上発表され、獲得インパクトファクターは100を超えました。その他の論文については、是非文献リストのぺージをご参考ください。また国内外の学会からも高い評価を得て、本題材に関する研究は、多くの学術科学賞を受賞しました(図4)。インプラント表面改質技術において、これほど高い学術科学的評価を得たものは、過去に例がなく、技術の高い信頼性と革新性を証明しました。

高い学術性、次世代教育への世界的影響

 現存のインプラント表面に関して、あるいは表面改質技術に関して、大学などの公の教育機関や教科書で、あるサーフェスはあるサーフェスを優れているとか、ある会社から出ているサーフェスは別の会社のサーフェスより優れているなどと、教えられたことはあるでしょうか。我々の知る限りこのような歴史はなく、それは現存しているインプラントサーフェスは、ブランド間に特別な能力の差がないことを示唆してます。

 光機能化技術はこの点において、大きく常識を覆しました。光機能化技術とそれに関連したチタンのエイジングの概念は、高い科学性と普遍性から、学術的、教育的な影響は世界へと広がっています。チタンのエイジングと光機能化の原理と効果に関する発見・発明は、ドイツ、スイス、オーストリアの国家レベルの教育プログラム(シラバス)に導入されました(図5)。このことは大きな意味をもち、光機能化は、表面改質法として,初めて常識化されて技術であることを意味し、学生や研修医までもが学び始めたのです。

 また、光機能化技術ならびにスーパーオッセオインテグレーションの概念、そして光技術によってチタンが生体不活性(バイオイナート)から生体活性(バイオアクティブ)へと定義が変化した歴史的転換は、チタン科学の著名な教科書へ採用されました(図6)。歯科から医科、工学へ発信する高い技術性、科学性が実証されました。もちろん、光機能化技術が開発されたUCLAカリフォルニア大学ロサンジェルス校においても、歯学部学生ならびにレジデント(研修医)教育にチタンエイジングならびに光機能化は導入されています。

 以上示した光機能化の概要ならびに特徴から、この技術によりインプラント治療は新たな時代に入ったことをご理解いただけると思います。本研究会では、臨床家の技術力と情熱、知恵を結集し、研究者のアイディアと融合させ、光機能化技術を用いて、インプラント臨床はもとより、歯科医療そのものを革新させ、その情報を世界へと発信し、日本が世界のオピニオンリーダーとして活躍することを目指すとともに、多くの患者さんへ学術的知見を目に見える形、体感できる形で還元していくことをミッションとして掲げています。